プルルルル……
「出ないんですか?」
「ええ、必要ありません。プライベート用の電話ですから。」
「…よろしいんですか?」
「いいんです。恋人ですから。」
「…は?」
少し驚いた顔の初老の同僚が少し面白く感じた。
そんなに意外だったのかしら。
「どうしました?新川。」
「いえ…恋人、でしたら出てもかまわないのでは。」
「今は仕事中ですし。」
「生真面目ですね。」
「そんなつもりはないのですが。」
呆れたような新川の声に、私は本心で返した。
だって、別に彼に恋してはいないから。
恋人になってほしいと言われたからその形を作らせてもらっただけで。
「それに…。」
「はい?」
今は彼を観察する方が大事。
神の鍵。世界を保つためのキーパーソン。
あんな普通の少年だけど、大事な人間。
それに。
「…彼を観察してる方が楽しいので。」
「…おやおや。」
新川は今度は面白そうな顔をした。
何かしら、聞き分けの悪い孫を見てるような視線ね。
「何か?」
「いいえ、そうですね。
ひとつ言わせてもらいますと。」
何かしら?
「あなたは、十分恋してる眼をしてますよ。」
え。
END
ちょっと可愛い感じの森さんを目指しました。
…かわいいかな…。
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